シンガポールのホーカー文化について

シンガポールに住む「シャイなカワウソ」です。

シンガポールに住んでいて頻繁に利用するのがホーカーセンターです。

ホーカーセンターは、その財布に優しい価格設定と昔ながらの味で地元民には切り離せない存在となっています。

本記事ではシンガポールの食文化であるホーカーセンターについて書いていきます。

ホーカーセンターとは?

ホーカーセンターはシンガポールの地元民に愛されるフードセンターです。

1つの大きな空間(半野外)に数十もの露店が立ち並んでいます。

ホーカーセンターの特徴は、財布に優しい価格設定で、一食を$3〜$5程で楽しむ事もできます。

ホーカーセンターは、国営住宅HDBと並行して建設が進められたこともあり、HDBの周辺で多く見られます。

ホーカーセンターの歴史

1800年代半ば

ホーカー(行商人)が街中に屋台(移動式カートのようなもので)を出し、ストリートフードを売っていました。

1968年〜1969年

シンガポール独立直後の1968年からホーカーの運営が許認可制となりライセンスが必要となります。

1968年〜1986年(ホーカーリロケーションプログラム)

シンガポールの都市化に伴い政府主導でホーカーを1つの大きな建物に集める取り組み(衛生面管理のため)が行われました。

また、1980年代に入ると、水道などの設備が整ったホーカーセンターの建設が始まります。

1986年に全てのホーカーが屋内への移動を完了させています。

この時の建物はシェルターのような簡易的なもので、ホーカーシェルターと呼ばれていました。

2001年以降(ホーカーセンター・アップグレードプログラム)

4億2千万ドルをかけたプロジェクトです。内容としては、タイルの張り替え、机や椅子の取り替え、屋根の改築、汚水用パイプの取り替え、換気設備の改善、排気管の取り替え等が行われています。

ホーカーセンターの特徴

運営は政府機関

運営は政府機関ホーカーセンターはによって運営されています。

また、シンガポールの環境庁(NEA : National Environment Agency)にはホーカーディビジョンと呼ばれるホーカーセンターの管理を行う部署もあります。このホーカーディビジョンでは、主に下記の4つを行います。

  • Policy and Planning Department
  • Development and Maintenance Department
  • Tenancy Management Department
  • New Hawker Centres Department

NEAのホーカーディビジョンに関するページ

https://www.nea.gov.sg/corporate-functions/who-we-are/divisions-and-departments/hawker-centres-division

ホーカービジネスを始める時も政府経由

ホーカーセンターで商売をはじめたい人は申請することで場所を割り当ててもらい、賃料と清掃などホーカーセンターの維持にかかる費用を負担する事になります。

また、賃料は入札方式となっていて、複数人が希望する場合は一番高い値を付けた人が落札となります。

NEAのTender Notice Tableで月ごとの空いている物件と入札結果が確認できます。

https://www.nea.gov.sg/docs/default-source/resource/becoming-a-hawker.pdf

徹底された衛生面の管理

衛生レベルの管理

1987年以降、ホーカーの衛生管理にはPoint Demerit Systemが採用されています。

このシステムでは、シンガポールの公衆衛生法に違反した店舗にDemerti Pointsが与えられ、これを繰り返す店舗はライセンスの停止や取消しをするというシステムです。

また1997年以降、ホーカーセンター内の全店舗で衛生レベルを示す札(A~C)を店頭に掲示することが義務化されました。

この衛生レベルは、シンガポール環境庁の衛生基準をもとに定期的な店舗チェックが行われ決定されます。

私の肌感覚としてはBは十分清潔で、Cはそのお店の料理が好きなら食べるといったイメージです。

ゴキブリは罰金

ホーカーセンターでは、店舗内でゴキブリやネズミが見つかった場合は店主がS$500程度の罰金を支払うという法律があります。このルールがあり店舗側も自主的にお店を清潔に保つよう努力を行なっています。

清掃スタッフ

ホーカーの店主は管理費を支払い、そこから清掃スタッフをホーカー全体で雇っており、食べ残しや汚れはすぐ清掃され、食器やトレイはまとめ洗いされる為一定の清潔度が保たれています。

「ホーカーセンター」「フードコート」「コーヒーショップ」の違い

シンガポールにはホーカーセンター以外にも複数の飲食店舗が集まるフードコートとコーヒーショップがあります。大きな違いは「建物の所有者」の違いとなります。

ホーカーセンター

政府が運営する半野外フードコートで、独立した建物もしくはHDBの一角にあります。ホーカーセンターの所有者は政府ですので、政府への申請を通して場所の割り当てが行われます。

フードコート

民間企業によって運営されるフードコートで、ショッピングモール内に建てられます。

ショッピングモールの管理会社が場所の所有権を保有しています。屋内であることからエアコンが聞いていますが、その分食べ物の価格も少しですがホーカーセンターとコーヒーショップより高めとなっています。

コーヒーショップ

見た目は普通のフードコートなのですが、大規模な飲食店の中に複数の店舗が入っている形態(各店舗の貸し主は飲食店の所有者)をとっているのがコーヒーショップです。

オーナーは飲み物のみの店舗(コーヒーショップ)を営業し、他の店舗では飲み物の販売を禁止することで貸し出した飲食店に来た客が飲む飲み物でも利益をあげるという仕組みです。

そのため基本的にはコーヒーショップには飲み物を扱った店舗は一つだけになります。

ホーカー文化をUNESCO(ユネスコ)の無形文化遺産に申請

シンガポールは2019年の3月にホーカー文化をユネスコの無形文化遺産に登録申請しました。

審査には1年半以上かかり、審査結果の発表は2020年末とされています。登録されれば、日本の和食やベルギーのビールなどに次いで食文化の無形文化遺産登録となります。

マレーシアとの喧嘩に

ユネスコへのホーカー文化の登録申請に声を上げたのが隣国マレーシアです。

実はホーカーはシンガポールのみで見られる文化ではなく、マレーシアや香港にも似た屋台街があります。

マレーシア政府は、ホーカーは両国に共通の文化なので、今回のユネスコへの申請を共同申請にしようと提案を出しています。

まとめ

シンガポールのホーカー文化について書いてみました。

ホーカーセンターの数は以前に比べると減ってしまいましたが、今でもシンガポールで住む人々の生活の一部として親しまれています。