Primary School Leaving Examination(略称:PSLE)は、シンガポールの教育制度として取り入れられている「小学校卒業試験」です。PSLEは、シンガポールで教育を受ける全ての生徒にとって人生の節目ともなる試験で、将来の進路を左右する重要な役割を果たしています。

PSLEの目的

PSLEの主な目的は、生徒が小学校の6年間で習得した知識や学力レベルを測定・評価し、各生徒の能力に合った中等教育の方向性を示す事となります。その為、PSLEは中等教育以降において各生徒の能力に応じた教育を提供するための、選抜手段となっています。

PSLEについて

The Primary School Leaving Examination (PSLE) is an annual national examination that is taken by candidates at the end of their final year of primary school education, in Singapore.Offered since the 1960s, the PSLE is an annual placement exercise for students at the end of their final year of primary school education in Singapore.

Candidates will be placed in the appropriate secondary school courses based on their PSLE Scores. The PSLE Score is derived from the sum of the subject scores, ranging from 4 to 32.

The Singapore Examinations and Assessment Board and the Ministry of Education Singapore are the joint examining authorities for the PSLE.

上記は SEAB (Singapore Examinations and Assessment Board) からの引用です。

PSLEの内容

PSLEでは、英語、数学、科学、母国語の4科目が試験対象となります。この4科目を通して各生徒が小学校で学んだ知識の総合的な理解を評価していきます。またPSLEでは、言語能力、数理能力、思考能力などそれぞれの分野においてバランスよく能力を発揮することが求められてきます。

PSLE後の進路

シンガポールの教育制度では、各生徒はPSLEの結果に基づき、Express、Normal (Academic)、またはNormal (Technical)のいずれかのコースに進学します。

PSLE後の進路 進路の内容
Express
  • 他のコースよりも速いペースで学習します。
  • 4年間でOレベル取得に向けて勉強します。
  • ジュニアカレッジ、ポリテクニック、または専門学校へ進学するチャンスがあります。
Normal (Academic)
  • 通常は5年間のコースで、4年目の終わりにN取レベル、その後にOレベル取得を目指します。
  • 勉学的な側面に焦点を当てつつも、実用的なスキルの向上も目指します。
  • Oレベルを取得した生徒は、Expressコースの生徒と同様に、高等教育への進学が可能となります。
Normal (Technical)
  • 4年間で、Nレベル取得を目指します。ただし、カリキュラムは技術的なスキルや実用的な知識に重点が置かれます。
  • 実践的な職業教育に関する要素が強く、卒業後はポリテクニックや技術教育機関(ITE)への進学が一般的です。

上記の表にあるように、PSLEは生徒の能力に応じた教育を受けるための出発点となります。

シンガポールの教育システムにおけるPSLEの位置づけ

シンガポールの教育システムにおいて、PSLEは中核とも言えるほど重要な位置を占めています。PSLEは、生徒が次の教育段階に進むための基準を提供し、また全ての生徒が個々の能力に合った教育を受けられるようにする事で、各生徒の持つ可能性を最大限に引き出す役割を担っています。

PSLEの問題点

シンガポールの教育制度として大きな役割を持つPSLEですが、その問題点が指摘される事も多々あります。以下に代表的な懸念点をまとめています。

子供に与えるストレスとプレッシャー

PSLEでは、子供達にかける過剰なストレスとプレッシャーが懸念されています。また、PSLEへの準備を切っ掛けに親子間での不安やストレスが引き起こされ、子供たちの精神健康に影響を与える可能性があると指摘されています。

ポテンシャルの早すぎる選別

PSLEでは、単一試験の結果に基づいて生徒が異なる進路へと選別されていきます。この中等教育前という早い時期での選別が、将来的に個人間の格差を助長させる可能性があると指摘されています。また、同時にPSLEで結果を出せなかった生徒が持つ将来の可能性を、子供の成長段階の早い時期に狭めてしまう可能性があるとも指摘されています。

親の裕福度や財力による不平等

裕福な両親を持つ生徒は、PSLEの準備(塾や習い事など)に親が資金を費す事ができます。これによって、裕福な親を持つ子供がPSLEにおいて有利になってしまう事が懸念されています。親の財力に関係無く、生徒を平等に評価できる仕組みが必要だという主張が一部から出されています。

「勉強」に対する過剰な評価

PSLEでは、小学校までの勉強内容を評価基準の主軸として生徒の早期選抜が行われます。この点が教育における狭い視野を助長し、生徒が持つ勉強以外に関する能力が軽視されてしまう可能性があると指摘されています。

まとめ

シンガポールのPSLEは、世界的に見てもユニークな試験制度の一つです。生徒たちはPSLEを通して自分自身の学力を評価されると同時に、各々のレベルに適した教育環境へと進んでいきます。賛否両論はありますが、シンガポールの教育制度が世界的にも高い評価を受ける理由の一つは、PSLEなどの方法を通して個々の生徒の能力に応じた教育を徹底しているからだと言われています。