
シングリッシュ(Singlish)とマングリッシュ(Manglish)は、それぞれシンガポールとマレーシアで話される現地スタイルの英語です。
シングリッシュとマングリッシュはそれぞれの国における日常会話で広く使われ、またシンガポールとマレーシアが持つ多民族文化を反映する「英語の方言」のような位置づけとなっています。
シングリッシュ | シンガポールで話される英語で、英語をベースに中国語、マレー語、タミル語、福建語などが混ざっているのが特徴です。 |
マングリッシュ | マレーシアで使われる英語で、こちらも英語を土台としながらマレー語、中国語、タミル語などの影響を受けています。 |
本記事では、シンガポールとマングリッシュの違いについてまとめてみました。
コンテンツ
シングリッシュとマングリッシュの違い
シングリッシュとマングリッシュは、どちらも中国語、マレー語、タミル語などの影響受けていて、アクセントも似通っています。その為、現地民以外の方が聞くと「違いを感じない」というケースも少なくありません。ただ、語尾のパターンや用語のチョイスには違いもあり、現地民同士の間では明確な違いが存在しています。
今回の記事では、シングリッシユとマングリッシュの違いを「文法」と「イントネーション」の2つに分けて解説しています。
シングリッシュとマングリッシュの見分け方
「Got」の使い方
シングリッシュとマングリッシュでは「got」を「have」の意味で使うという特徴があります。ただし、その使い方に微妙な差があります。特にマングリッシュでは「Got」を動詞に直接つける用法が多くなる他、「got」 = 「there is/are」 の意味でも頻繁に使われます。
比較の例①
日本語: あの人、もう食べたよ。
- シングリッシュ: He already eat.
- マングリッシュ: He got eat already.
シングリッシュは比較的英語の文法に近い構成で話される一方、マングリッシュは「got + 動詞」という独特のパターンが日常的に使われています。
比較の例②
日本語: この部屋にはエアコンがあります。
- シングリッシュ: This room got aircon.
- マングリッシュ: Got aircon in this room.
シングリッシュでは主語を明示し「This room got...」の語順が一般的です。 マングリッシュでは「got」を主語なしで用い「〜がある」の形で表現しています。
「時制」の扱い方
シングリッシュとマングリッシュでは、「時制(特に過去形や現在完了形)」が簡略化される傾向にあります。ただし、マングリッシュの方がより口語的で動詞の原形をそのまま使うケース(もう少しラフに主語や時制が崩れる)が多くなります。
比較の例①
日本語: 私はまだ昼ご飯を食べていません。
- シングリッシュ: I haven’t eat lunch yet.
- マングリッシュ: I not yet eat lunch.
シングリッシュでは「have not + 過去分詞」という構造をある程度保持していますが、動詞の原形「eat」が使われている点に簡略化が見られます。マングリッシュでは「not yet」+動詞原形という語順が一般的で、助動詞を使っていません。
比較の例②
日本語: あなたは彼に会ったことがありますか?
- シングリッシュ: You met him before?
- マングリッシュ: You got meet him before?
マングリッシュでは「got + 動詞の原形」で完了のニュアンスを示す事が一般的です。
「文末詞」の違い
文末詞は、シングリッシュとマングリッシュを特徴づける代表的な要素のひとつです。話し手の感情や強調、疑問などを示す役割を持ち、言葉のニュアンスに大きく影響してきます。文末詞はシングリッシュとマングリッシュの両方で多用されますが、そのチョイスには微妙な差が存在します。
シングリッシュの文末詞:lah, lor, meh, sia, leh など
シングリッシュでは、中国語(特に福建語や広東語)の影響を強く受けた文末詞が使われます。感情や態度をソフトに伝える役割が多く、親しみや軽い主張、疑問のニュアンスなどを添えるのに適しています。
- lah:軽い強調・断定 例:Just do it, lah.
- lor:受け入れ・あきらめ 例:Up to you, lor.
- meh:疑い・意外感 例:Really can do meh?
- leh:提案・確認 例:Can try first, leh.
- sia:驚き・感嘆(若者言葉的) 例:So fast, sia!
マングリッシュの文末詞:lah, lor, meh, mah, wor, ar など
マングリッシュにも「lah」「 lor」「meh」などはありますが、加えて「mah」「wor」「ar」など、マレー語や広東語的な音のリズムを含む文末詞が多用されます。
- mah:当然・当たり前の主張 例:I already told you, mah.
- wor:柔らかく反論・新情報提示 例:She not coming wor.
- ar:軽い確認・疑問 例:You want go now ar?
「イントネーション」の違い
シングリッシュとマングリッシュは、文法や語彙だけでなく「イントネーション」にも違いがあります。特に語尾の音の上がり下がりが聞き分けのポイントとなります。
■ シングリッシュ
「中国語系(特に福建語・広東語)」の影響を受けており、語尾が上がるイントネーションが多く使われます。また、感情表現がオーバー気味で、驚きや強調を抑揚で表現するのが特徴。
■ マングリッシュ
「マレー語やインド系英語」のリズムが混ざり、語尾が下がる、あるいは平坦になる傾向があります。より断定的でゆったりとした響きになるのが特徴です。また、感情表現はやや控えめで、語尾でゆるく伝えるのが一般的。
比較の例①
日本語: 本当にそうなの?
- シングリッシュ: Really meh?
- マングリッシュ: Really ah?
シングリッシュでは、語尾の「meh」と共にイントネーションが上がり強調されます。一方のマングリッシュの例文では「ah」が使われていて、語尾はやや下がります。落ち着いたトーンで軽い確認のニュアンスを伝えるのが特徴です。
比較の例②
日本語: 今日は行けないかも。
- シングリッシュ: Today cannot go leh.
- マングリッシュ: Today cannot go lah.
シングリッシュでは「leh」で語尾を上げつつ、同情や残念さを含む表現となります。一方のマングリッシュでは、「lah」で語調を落ち着かせて締め、あくまでも断定するように話します。
最後に
シングリッシュとマングリッシュは、どちらも英語をベースにしながらも、シンガポールとマレーシアが持つ多民族性の影響を強く反映したローカル言語です。発音や文法、語尾表現、時制の使い方に微妙な違いがあり、現地での会話ではこれらがアイデンティティの一部として自然に使われています。
また、外国人からするとシンガポールやマレーシアの人々とのコミュニケーションをより深めるきっかけにもなります。旅行や移住、ビジネスなどでシンガポールやマレーシアに足を運ぶ祭には、使ってみて下さい。