シンガポールでは「シングリッシュ」と呼ばれるシンガポール特有の英語が話されています。シングリッシュはそのアクセントが独特で、時には「シンガポール訛の英語」と表現される事もあります。
このページは、そんなシングリッシュが持つ言語の特徴や欧米英語との違いに加えて、シングリッシュの中でも特によく使われるフレーズを24個まとめた完全ガイドになります。
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シングリッシュ(Singlish)とは?
まず、シングリッシュ(Singlish)について簡単に知っておきましょう。シングリッシュは、シンガポールで話される英語を指す言葉です。シンガポールは英語圏や準英語圏と呼ばれる国ですが、欧米で話される英語(アメリカ英語やイギリス英語)とアクセントやスラングが異なる事からシングリッシュと区別されて呼ばれる事があります。
シングリッシュはあくまで「シンガポール人が持つ独特のアクセントやスラングが強く出ている英語」に使われる名称で、日本語や中国語のように公的な形でシングリッシュという言語が存在するわけではありません。
シングリッシュの特徴
シングリッシュにはベースとなる英語以外の言語の要素が多く取り入れられています。これにはシンガポールが持つ多民族国家としての背景が関係しています。
シングリッシュのイントネーションや文章構造は、シンガポールで話される福建語、広東語、テオチュー語のような中国語のほか、マレー語やタミル語などの影響も受けています。よく知られるシングリッシュの例としては、マレー語で「推定」を意味する「agak agak」や福建語で「忙しい人」を意味する「kaypoh」などがあります。
文法面での特徴
シングリッシュは、文法面で欧米英語と少し異なります。ただし「シングリッシュの文法」というものは公式には存在せず、あくまでもシンガポールに住む方が使う話し方の「癖」や「パターン」という扱いとなります。
ここではシングリッシュ特有の使い方の中から特徴的なものをいくつか紹介します。
■ シングリッシュ特有の時制表現について
シングリッシュでは過去と未来に起こった事を現在時制で表現する事があります。この場合、伝えたい内容は動詞の時制からではなく「会話の流れ」や「yesterdayやalready」などの時間を表す言葉から汲み取ります。また、シングリッシュが強い場合は「Be動詞」が抜け落ちる事もあります。
時制表現の例
- 通常:I ate it already. ⇨ シングリッシュ:I eat already.
- 通常:She shopped here yesterday. ⇨ シングリッシュ:She shopped here yesterday.
- 通常:John is very rich. ⇨ シングリッシュ:John very rich.
■ シングリッシュで登場する繰り返し表現
シングリッシュでは感情表現(リラックスした表現や強調表現など)の方法として単語を繰り返して使用する事があります。ただし、繰り返し表現が使用される単語にはパターンがあり、単純に「繰り返し=強調表現」という使われ方ではありません。
繰り返し表現の例
- You come come.
- Let her be for now. Cry cry for a while then she'll be all right.
- Don't always eat sweet sweet things.
- He walk walk then he falls down.
発音面での特徴
シングリッシュは、発音面でも欧米英語と異なります。また、シングリッシュの発音は、年代や母語(シンガポールでの第二言語)の使用度などでも変わってきます。(例:シングリッシュは、シニアや母語の使用度が高い方で濃くなり、若い世代や英語を常用する方ではアクセントが軽くなる傾向にあります。)
ここではシングリッシュ特有の発音の中から特徴的なものをいくつか紹介します。
■ 語尾の子音が抜け落ちる
シングリッシュでは一部の単語で「語尾の子音」が抜け落ちます。特に「息」を使って発音する「T」や「P」でよく見られる特徴(正確には「抜け落ちる」と言うよりも「子音の発音が弱い」といったイメージとなります)となります。
抜け落ちやすい子音の例
T / P / D / G / K など
※子音は抜け落ちますが、音(子音)が無いものとして発音しているわけではありません。
■ 母音が短くなる
シングリッシュでは、母音の音が単純化されて長母音が短母音として発音されることがあります。
母音が短縮される例
- 「start」が「stat」のように聞こえる
- 「seat」が「sit」のように聞こえる
※短縮化される母音にもパターンがあり、全ての長母音に短縮化が起こるわけではありません。
■ イントネーションとテンポが一定
アメリカ英語やイギリス英語には「テンポ(緩急)」や「イントネーション(音の上がり下がり)」があります。シングリッシュでは、欧米英語のような音節毎の緩急や音の上がり下がりは無く、比較的にフラットな英語となります。(日本語もテンポやイントネーションを使わないフラットな言語です。)
よく聞くシングリッシュワード(28選)
シンガポールでよく耳にするシングリッシュワードの一覧を紹介します。(ABC順)
Act blur
Act blurは「とぼける」や「知らないふりをする」といった意味を持つシングリッシュです。自分が知っていることを隠したり、わざと気づかないふりをする人に使われる言葉です。
「Act blur」の例
- Don’t act blur, I know you took my stuff.
- Hey Jack, don't act blur, where did you hide my cap?
Agak-agak
Again-Agakは「概算」「だいたい」といった意味を持つマレー語由来のシングリッシュです。持つ言葉です。時間・量の目算をする時やざっくりと会話を進める時に使われます。
「Agak-Agak」の例
- There are no fixed portions for this recipe; I just agak-agak.
- How much salt to use for this dish? Just agak agak!
- I don’t know how much this jelly cost but I agak-agak it’s around $3.
Aiyoh
Aiyohは「ああもう」「やれやれ」といった意味を持つ中国語由来のシングリッシュで、英語の「oh no」に似ている表現です。文頭やリアクションに使用されるワードで、全体的にネガティブな意味合い(不快感や不満、驚きなど)を持っています。
「Aiyoh」の例
- Aiyoh, why is the bus taking so long to arrive?
- Aiyoh, why did you fall down again?
Alamak
Alamakは「しまった!」や「なんてこと!」といった意味を持つマレー語由来のシングリッシュです。マレー語の「allah(神)」と「Emak(母)」からできた言葉でシンガポール式の「Oh my god」や「Oh no!」です。ただ、使われるタイミングと発音から日本人は「あらま!」とイメージした方が覚えやすいです。
「Alamak」の例
- A : Did you manage to complete your assignment?
- B : Alamak! I totally forgot about my assignment.
Ang moh
Ang mohは主に「白人(外国人)」を指すシングリッシュです。文脈によっては親しみを込めた表現にもなりますが、差別的に捉える方もいるので注意が必要です。
「Ang moh」の例
- The ang moh over there seems to love durian!
- My neighbor is an ang moh who speaks perfect Mandarin.
- The ang moh tourists are enjoying the local food.
Atas
Atasは「高級」や「上流」といった意味を持つマレー語由来のシングリッシュです。上品で地位の高いの人や高級な場所を表現する時に使われる言葉です。
「Atas」の例
- The meal we had at that fine dining restaurant was so atas.
- Ben will never want to eat at that hawker centre, he’s too atas!
- He is too atas to be caught dead eating at a hawker centre.
Bo Jio
Bo Jioは「誘われてない」という意味を持つ福建由来のシングリッシュです。お出かけや食事の場面で、自分が誘われなかった時に使われます。
「Bo Jio」の例
- How could you go clubbing and bo jio me!
- You guys are having dinner together? Bo jio.
Bo liao
Bo liaoは「暇つぶし」や「無意味」といった意味を持つシングリッシュです。退屈な気分を表現したり、 何もすることが無く暇な時に使われます。
「Bo liao」の例
- You’re so bo liao, wasting your time doing things your boss didn’t even ask for!
- You are damn bo liao, you messaged me to ask for a non-important question.
Can
Canは「できる」や「大丈夫」といった意味を持つシングリッシュです。通常の英語では「Can you do that?」や「Yea, I can.」となる文を「Can」の一言にまとめてしまう短縮表現です。
「Can」の例
- A : You compile this work by 3:00 pm, can?
- B : Can!
Can or not?(Can anot?)
Can or not?は「できるか?」や「大丈夫?」といった意味を持つシングリッシュです。英語を崩したシングリッシュの表現で、可能か不可能かを聞く時(確認やお願いをする時)によく使われます。
「Can or not?」の例
- Dinner at 7pm? Can or not?
- You will finish this assignment by today, can or not?
Chope
Chopeは「場所取りする」や「予約する」といった意味を持つシングリッシュです。特にホーカーセンターや固定席のない飲食店などでテーブルを確保する時に使われます。またシンガポールでよく利用されるレストラン予約サイトも「Chope」という名前で運営されています。
「Chope」の例
- Can you chope a seat for me?
- Let’s chope the table by leaving a pack of tissues there.
Die die must try
Die die must tryは「絶対に試さなきゃ!(やってみたい)」という気持ちを表す言葉です。「本当にやらなきゃいけない」という意味ではなく「損をしてでも経験してみたい」といったニュアンスとなります。
「Die die must try」の例
- I’m not kidding, this place has the best laksa. Die die must try.
- Wah, the chicken rice from that stall damn shiok! You die die must try!
- You die die must try the tom yum soup here.
Huat Ah
Huat Ahは「繁栄を願う」や「繁栄を歓迎する」といった意味を持つ福建語由来のシングリッシュです。シンガポール国内でも主に中華系の方々が使う言葉で、旧正月など縁起の良い時期やお祝いの場面で使われます。
「Huat ah」の例
- Huat ah, I just won the lottery!
Jialat
Jialatは「大変」や「ひどい」といった意味を持つシングリッシュです。問題や状況が悪化したときや、対応の難しい状況に直面しているときに使われます。
「Jialat」の例
- This rain is never-ending, so jialat, we can't go out!
- My phone broke again, jialat, I just fixed it last week!
- If you don’t study for the exam, you will be jialat tomorrow.
Kaypoh
Kaypohは「おせっかい」や「干渉しすぎ」といった意味を持つ福建語由来のシングリッシュです。他人のことに過剰に関わる人を表現する時に使われます。
「Kaypoh」の例
- Dude, it’s my problem, no need for you to be kaypoh.
- Why you so kaypoh?” / “Don’t kaypoh lah.
Kena
Kenaは「何かを受ける」や「巻き込まれる」といった意味を持つマレー語由来のシングリッシュです。望まない出来事や不幸な状況(ネガティブな結果や罰、予期せぬトラブルなど)に遭遇したときに使われます。
「Kena」の例
- He kena scolded by his boss for being late.
- My car kena fined for parking illegally.
- She kena caught in the rain without an umbrella.
Kiasu
Kiasuは「負けず嫌い」や「心配しすぎ」といった意味を持つ福建語由来のシングリッシュです。ホーカーセンターなどで長時間待ってでも席を取る方なんかもKiasuと呼ばれます。また、シンガポール人は基本的にKiasuだとも言われています。
「Kiasu」の例
- She queued for eight hours to get the latest iPhone – so kiasu!
- Look at that kiasu woman jumping the queue for the free popcorn.
- Those kiasu aunties pushed through the crowd for the free goodies.
Lah, Leh, Loh
Lah、Leh、Lorは「~だよ、~ね、~じゃん」といった意味を持つシングリッシュです。これらは全て会話の語尾に付けて感情や意味を強調するために使われます。特に「Lah」はシンガポールの代名詞にもなっている「ok Lah」にも使われています。
「Lah」の例
Lahは、前の文や単語を強調するために使われるシングリッシュワードです。特にポジティブな会話またはネガティブな会話に限定といった事はありませんが、Lahを使うとよりカジュアルでフレンドリーに聞こえます。
- A: I’m really quite certain that I saw your husband buying 4D at 7–11!
- B: No lah, cannot be! My husband is not that kind one lah!
「Leh」の例
Lehは、話している内容に対して確信を持っていない場合に使われる事が多いシングリッシュワードです。例としては、「私はそう思うんだけど、違うのかな?」といった表現をしたい時に使われます。
- A: I'm really quite certain that I saw your husband buying 4D at 7–11!
- B: Huh? Sure or not? My husband not the kind to play 4D leh…
「Lor」の例
Lorは、「諦め」の表現として使われる事が多いことばです。例としては、「どうしようもないから、しょうがないじゃん」といった表現をする場合に使われます。
- A: Wah, I heard you lost your job? That sucks balls sia…
- B: What to do, life goes on. Like that then like that lor…
No Need
No Needは「必要ない」や「いらない」といった意味を持つシングリッシュです。通常の英語では「It is not necessary」や「I do not need that」となる文を「No need」とまとめてしまう短縮表現です。
「No Need」の例
- A : Do you need me to call you tomorrow morning?
- B : No need!
Ok Lah
Ok Lahは「まあいいよ」や「大丈夫だよ」といった意味を持つシングリッシュです。軽い同意や受け入れの際に使われます。肯定的なニュアンスを含みますが、感情を強調しないカジュアルな表現です。
「Ok lah」の例
- Ok lah, I understand now what you mean.
- He didn’t do it perfectly, but it’s ok lah, good enough.
- Ok lah, let’s settle this now and move on.
Paiseh
Paisehは「恥ずかしい」や「申し訳ない」といった意味を持つシングリッシュです。軽い謝罪や自己意識を表す場面で使用されます。
「Paiseh」の例
- Paiseh, I forgot to bring your book today.
- Paiseh, I’m not good at public speaking.
- Paiseh, can you help me with this? I don’t understand it.
Sabo
Saboは「妨害する」や「邪魔する」といった意味を持つシングリッシュです。誰かの行動や計画を故意に妨害する/された時に使われます。またSaboは「Sabotage(サボタージュ)」という言葉から来る短縮表現でもあります。
「Sabo」の例
- You sabo your friend just to win the competition. You’re really the sabo king.
- Hey, don’t sabo me, please. I don’t want the teacher to ask me a question.
- My sister sabo me to wash the dishes for this week.
Sayang
Sayangは「大切にする」や「惜しい」といった意味を持つシングリッシュです。物事が期待に届かなかった場合や、大切にしたい感情を表す時に使われます。
「Sayang」の例
- Sayang you couldn't come to the party, it was so fun!
- That shirt was really nice, sayang it didn't fit you.
- Sayang the weather is so bad today, we can't go hiking.
Shiok
Shiokは「最高」や「素晴らしい」といった意味を持つシングリッシュです。主に良い体験をしたときや、気持ちいいと感じたときに使われます。また、宝くじが当たった時や暑い日に冷たいシャワーを浴びるなどの「単純な喜び」や「美味しいものに対する表現」などにも使われる言葉です。
「Shiok」の例
- This burger is so juicy, so shiok!
- Wow! This Mantou is shiok with this chili crab sauce!
- Shiok! I won the lottery!
Sian
Sianは「退屈」や「うんざり」といった意味を持つ福建語由来のシングリッシュです。つまらない状況や疲れた気分を表すときに使われる表現で、ため息混じりSianと言われるのをよく目にします。
「Sian」の例
- I have so much paper work to settle by today. Sian.
- Time is passing so slowly. Sian.
- I have to go to work early tomorrow. So sian.
Siao
Siaoは「頭がおかしい」や「狂ってる」といった意味を持つ福建語由来のシングリッシュです。シングリッシュ版の「Crazy(クレイジー)」にあたる言葉で、「人」と「事象」のどちらに対しても使う事ができます。
「Siao」の例
- Who busks with horse masks in this heat? Siao!
- You ate 3 hamburgers all by yourself!? So siao!
- Siao, how did you eat such a spicy food?
Tabao
Tabao は「持ち帰る」や「Take Out(テイクアウト)する」といった意味を持つシングリッシュです。一般的に食べ物に対してのみ使用される言葉で、食事を持ち帰る時に使われます。
「Tabao」の例
- Hi, can I have one chicken rice, tabao please?
- The weather is getting worse. I will just tabao food for lunch today.
- Can you help me tapao my dinner on your way back?
Wah lau / Walao eh
Wah Lau / Walao ehは「なんてこった」や「信じられない」といった意味を持つシングリッシュです。驚きや不満などの感情を強調するために使われます。
「Wah Lau」の例
- Wah lau, I can't believe we missed the last bus!
- Wah lau, the queue for the tickets is so long!
- Wah lau, why is it so hot today?
「Walao eh」の例
Walao eh は、Wah Lau よりもさらに感情を強く、またカジュアルに表現する際に使われます。より親しい間柄で使われることが多く、少しくだけた印象を与えます。
- Walao eh, you really spent that much on a phone?
- Walao eh, how come you didn't tell me about the party?
- Walao eh, traffic jam again! So frustrating!
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