
赤い提灯が灯り、爆竹の音が鳴り響く旧正月。
なぜ人々は赤を飾り、大きな音で新年を迎えるのでしょうか。
その背景には、はるか昔から語り継がれてきた「年獣(ニェン)」という怪物の伝説があります。
これは、恐れから始まり、知恵によって乗り越えた物語。
そして、今日の春節の風習へとつながる物語です。
ニェンの伝説

大昔、中国のある村に「年獣(ニェン / Nian)」という怪物が現れ、毎年、旧暦の大晦日(除夕)になると人々や家畜、収穫物を襲っていたといわれています。村人たちは恐れ、山へ避難するのが習わしでした。

ある年、白髪の老人が村に現れます。人々が逃げ支度をする中、老人はこう告げました。
「赤いものを飾りなさい。火を焚きなさい。大きな音を出しなさい。」

半信半疑ながらも、村人は門に赤い紙を貼り、家々に灯りをともして爆竹を鳴らしました。その夜、怪物が現れますが――赤い装飾、炎の光、爆竹の轟音に驚き、山へ逃げ帰ったと伝えられています。

翌朝、老人の姿は消えていました。実は神仙(神の使い)だったとも語られます。
こうして人々は怪物を退ける術を知り、毎年この日に赤い装飾や爆竹で邪気を払うようになりました。これが春節(旧正月)の風習の起源のひとつと考えられています。
なお、この物語には地域や時代によってさまざまなバリエーションが存在します。中には白髪の老人が登場しないものや、村人自身が工夫して怪物を退けたとする話もあります。また、赤い装飾や大きな音だけでなく、怪物を威嚇するために獅子の姿を模した装いで舞い踊ったという伝承もあり、これが現在のライオンダンス(獅子舞)へと発展したとする説もあります。
